時代と共存する美術館 ~もっとアートを身近なものに~

皆さんは美術館を訪れたことはありますか?日本を代表する美術館の一つ、東京国立近代美術館は、北の丸公園に位置しています。
1952年に、日本で最初の国立美術館として中央区京橋に開館した東京国立近代美術館でしたが、1969年、手狭であることを理由に北の丸公園の地に本館が移転しました。
どうして北の丸公園が選ばれたのかというと、それは皇居のすぐそばという景観が、日本の国立美術館として相応しかったから。現在の本館4階には、皇居や千鳥ヶ淵、都会のビル群が一望できる「眺めの良い部屋」があります。2002年のリニューアル以前は事務室であったこの部屋ですが、ここを訪れる多くの方に、ぜひこの景色を体感してほしいとのことで改修されました。東京国立近代美術館は、北の丸公園にて半世紀もの間、日本各地、そして世界中より来館者の皆さんを迎え入れています。

  1. 1北の丸地区に立地する東京国立近代美術館
  2. 2実際に対話型鑑賞を体験してみました
  3. 3東京国立近代美術館の若者に向けた新たな取り組み
  4. 4東京国立近代美術館の将来のビジョン

1 北の丸地区に立地する東京国立近代美術館 ―――その歴史と他の美術館との違い―――

現在、千代田区内には5つの美術館がありますが、そのなかでも東京国立近代美術館は唯一の国立美術館であり、展示作品数の多さと、作品への理解を深めさせてくれる「所蔵品ガイド」が魅力です。
まず、展示作品数の多さ。東京国立近代美術館では、常設の所蔵作品展(年に4回ほど展示替えされる)及び、年に3本から4本の企画展を実施しています。所蔵作品展と企画展を同時に展開できるのは、広い展示スペースと数多くの所蔵作品を有しているからこそであり、訪れるたびに新たな作品に出合うことができます。つまり、1つの場所で2つの展覧会が楽しめるというわけです。

しかも、国の重要文化財も収蔵されています。教科書で一度は見たであろう作品の数々が展示されているのです。今まで小さな紙面でしか見てこなかった作品。壁一面サイズの実物を目の前にすると、とにかく迫力がありますよ。
この素晴らしい作品を多くの人に楽しんでもらおうと、東京国立近代美術館では、ボランティアスタッフによって、毎日のように「所蔵品ガイド」が行われています。この所蔵品ガイド、対話型鑑賞という鑑賞方法で実施されています。これは、私たちが美術館の作品解説と聞いて想像するような、学芸員の方が解説をしているのをただ単にそばで聞くというものではありません。ファシリテーターと呼ばれるガイドの方とともに、グループで作品を鑑賞します。グループの参加者みんなで作品を鑑賞し、作品を見て思ったことを自由に語っていくのです。みんなで語りあいながら作品についての理解を深めていきます。 ガイドスタッフはボランティアで募集されており、現在約40名在籍しているのだそう。このガイドスタッフ、なんと倍率5倍以上の選考を勝ち抜き、その後さらに4か月の研修も経た方々なのだとか。この質の高いスタッフさんたちのおかげで、対話によるガイドが成り立っています。さらに毎日開催というのは全国的にとても珍しく、これも東京国立近代美術館ならではと言えそうです。

2 実際に対話型鑑賞を体験してみました

音楽の歌詞や小説を読んで、共感したことはありませんか。また、数年後見たり聴いたりしてみると、当時と違う気持ちになりませんか。これが絵でも同じことが起きるといえます。
「所蔵品ガイド」の対話型鑑賞は最初から、自分の見る力や考えることや話すことを通じて、自分たちでその作品の魅力に近づいていくというようなやり方です。 「所蔵品ガイド」の対話型鑑賞を体験してみると、「自分の思ったことを自由に発言できる」、これがとても楽しかったです。自分の意見を言うのを躊躇してしまう経験、誰しも少なからずあるのではないでしょうか。
所蔵品ガイドの主役は参加者の私たちです。ファシリテーターであるガイドスタッフは、私たちの対話をより活発にするお手伝いをしてくれます。

実際、ガイドスタッフの巧みな力で、いろんな考えや意見が飛び交い、一つの絵で人によってこんなに考えがあるのかと驚きます。また、参加者の一人の発言で、「それを踏まえると、実はこうなんじゃないか」と自分の中でもどんどん新しい考えが思い浮かび、謎解きをしている様な感覚で、わくわくしました。
しかし、その時思った事は、その場にいた人たちとその時の私の考えで出来ています。考えを色で言うのなら、美術の知識が豊富な人の意見はコバルトブルーで作品の時代背景に詳しい人の意見はマゼンタ。みたいに、いろんな人の意見の色を混ぜることでその場限りの、60分だけのオリジナルな色ができます。そしてまた見に来てもその色にはなりません。しかし、それが魅力だと思います。
美術の知識が全くなくても、絵に対して想像を巡らせることができるはず。いろんな価値観に触れ合い、楽しんで欲しいです。美術鑑賞は難しいと思っている皆さん!ぜひ一度足を運び、所蔵品ガイドに参加して、自由に美術を感じて、考えて、言葉にしてみませんか?

3 美術館スタッフの方にお聞きした 東京国立近代美術館の若者に向けた新たな取り組み

みなさんはどんな時に美術館に行きますか?
今日何しようかな?となった時に美術館という選択肢が入ってきますか?絵の知識がないとダメなんじゃ、静かにじっくり見ないといけないのでは?絵を見て何していいか分からないといった人も多いのではないでしょうか!
しかし、絵の知識はなくてもいいんです!おしゃべりしながら鑑賞してもいいんです!絵を見て正解はありません!自分の好きなように鑑賞していいんです!
普段足を運びづらいと思っている人、特に若者に向けて行っている東京国立近代美術館の取り組みについて紹介していきます!

●キャンパスメンバーズ
国立美術館が提案する大学・短期大学・高等専門学校などを対象とした制度で、加盟校の学生であれば、学生証を見せるだけで、美術館の所蔵作品展は無料!企画展は割引で鑑賞できる!東京国立近代美術館(本館)では、学生は250円が0円に!
今回美術館に取材しに行かせていただきましたが、無料であれだけの数の作品を見れて、対話型鑑賞を体験できるのは千代田区内の美術館だけでなく、日本全国の美術館でもなかなかないと思います!学生の中には時間はあるけどお金がないという方も多いと思いますので、無料ですし、遊びに行くときに美術館を候補に入れていただきたいです! 学生のうちに一度はこの制度を使わないと後で後悔しますよ!
https://www.campusmembers.jp/


運営管理部・普及担当の渡邊千智さん

●大学等教育機関への授業!
小・中・高等学校、大学、生涯学習団体に向けてトークを行ってアートに興味を持ってもらうきっかけ作りをしています!美術館のスタッフさんは大学の研究室やゼミで訪れる方も多いとおしゃっていました。最近ではビジネスの世界でもアートの重要性について書いた本が多く出版されているので、ぜひ担当教官に頼んでみんなで行ってみてはいかがでしょうか。目的や人数などの相談に応じ、特別に対話型鑑賞のプログラムを組んでくれるそうですよ。


主任研究員 教育普及室長の一條彰子さん

●金曜と土曜日は夜8時(夏は9時)まで開館!
社会人になるとなかなか平日のお昼に時間を取れることもないのではないでしょうか、そういう方たちに向けて、美術館は夜も開館しています!
特に夏の夜は7時から30分間のフライデー・ナイトトークを2回実施!椅子に座って参加者でじっくり話し合う企画をやっています。金曜の夜に絵を見てみんなでおしゃべりをして、そのあとにご飯に行くというような充実したフライデーナイトを過ごしてみてはいかがでしょうか!違う世界の人や運命の相手と出会うきっかけになるかもしれませんよ!


広報室長の滝本昌子さん

ほかにも東京メトロとコラボレーションしたアートと謎解きのイベントを開催したりと、自分の中では意外にも若者が美術館に来るきっかけ作りとして様々な取り組みを行っているのが印象的でした!ぜひ皆さんも一度美術館のwebサイトを調べてみてください、興味深い企画があるかもしれませんよ!

4 東京国立近代美術館の将来のビジョン

美術館のスタッフさんは、美術館という存在が、海外からきたような特別な企画展で行列を作って並んだり、頑張って美術館行くぞという特別な場所ではなくて、疲れた時やリフレッシュしたいときにマッサージ店やカフェに行くように、もっと身近に普段遊びやデートに行くときの選択肢となったり、また人生の岐路に立ったときなど、もっと日常の生活の中に美術館が入っていきたい、と考えているとおっしゃっていました。そういう存在になれるようにいろいろな企画を行い、美術館を身近に感じてもらうきっかけ作りをしていらっしゃいました。
自分自身、今まで美術館に行ったという経験はほとんどなく、美術館行くのってハードル高いなと思っていたのですが、今回取材で対話型鑑賞を体験したことにより、美術館ってウェルカムでオープンな場所だと感じました。一緒に取材したメンバーの中には飲食しながら絵を鑑賞してみたいと提案していたので、もしかしたらこれから美術館で飲食しながら絵を見るといった美術館の固定観念をぶち破る取り組みが行われるかもしれません!
一度、遊びやデートで美術館にいってみると、友達や恋人、自分自身の意外な一面に気づいたり、趣味は美術館巡りなんて後々言っているかもしれませんよ!皆さんもぜひ一度、東京国立近代美術館に足を運んでみてはいかがでしょうか。

展覧会・イベント等最新情報は東京国立近代美術館公式SNSフォーローで!
Facebook https://www.facebook.com/momat.pr
Twitter https://twitter.com/MOMAT60th

<取材・文> 共立女子大学 文芸学部   山下 優佳
法政大学   国際文化学部 河野 晴香
法政大学   経営学部   寺下 維歩起

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